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エコシステム:ハイテク輸出大国イスラエルを生み出したからくり その2 教育・研究機関

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エコシステム:ハイテク輸出大国イスラエルを生み出したからくり その2 教育・研究機関

Maor Schwartz@SOMPO CYBER SECURITY | 2020年2月5日

昨年8月に掲載を始めた『エコシステム:ハイテク輸出大国イスラエルを生み出したからくり』ですが、今回はエコシステムにおける「学」(教育や研究機関など)の役割やその特徴について取り上げます。引き続き、案内役を務めますのはSOMPO CYBER SECURITYでシニアリサーチャーを務める私、Maor Schwartz(マオール・シュワルツ)です。

サイバーセキュリティ分野における専門的教育

サイバーセキュリティ分野に関して言えば、その教育は早ければ中学校に上がるとすぐに始まります。例えば、#CyberClubと呼ばれる10代の女子生徒を対象としたコンピュータサイエンスとサイバーセキュリティの取り組みがあり、講師は業界で活躍する現役の専門家が努めます。この取組は前回のエコシステムブログ「軍隊」でも紹介した8200部隊との協力のもと進められています。

2012年以降、サイバーセキュリティは高校での選択科目にもなっており、世界でも珍しい取り組みなのではないかと思います。高校で選択科目としてのサイバーセキュリティの課程を修了すると、そのまま学業に専念することもでき、軍隊への入隊時にも「ソフトウェアエンジニアリング」に特化した実践的な人材として、資格認定につながる研究を続けることもできます。

サイバーセキュリティを学部課程で専門に扱っている大学も少なくなくありません。

イスラエルは、コンピュータサイエンスの学部の中の1単位ではなく、独立したサイバーセキュリティ学部を設立し、博士課程を設けた最初の国とも言われています。

ほとんどのサイバーセキュリティプログラムには「技術、ビジネス、文化のシナジーを実現している先進的な企業や施設への訪問」というシラバスが存在し、実践に向けた「ハンズオン」教育が盛んです。「企業や施設」と言っても形態は様々ですので、スタートアップや成熟した企業など、学生が求める要件に応じて訪問企業が決められることもあります。もちろん、こうした専門課程を修了している人材は企業の採用担当者からも人気ですし、企業と大学や研究施設の間の交流は非常に盛んです。共同のリサーチプロジェクトから企業の経験豊かな専門家が講師となる特殊な教育プログラムまで、その取り組みは様々です。

技術転用の仕組み『テックトランスファー』

このような取り組みはサイバーセキュリティ分野に限ったことではありません。

農業、医療など、様々な分野で研究内容を実用的な技術に転用し、社会貢献(社会課題の解決)に繋げ、商業化し、利益を生み出す仕組みづくりは非常に盛んです。

このエコシステムブログのプロローグでも書きましたが、イスラエルという国の置かれている環境は決して恵まれたものではありません。小国であり、自然環境的、更には地政学的にも難しい環境にあり、土地、水、人材、全てにおいて限られた資源を有効に使うことが求められてきました。ピンチはチャンス、自らが抱える課題を解決するための技術が結果として、世界が求めている技術でもあるわけです。

イスラエルは人口900万人弱の小国です。

イスラエル国内での需要を期待して、莫大な研究費用を費やすことは不可能です。私たちの視線は常に世界に向けられています。世界でも需要が見込める技術に惜しみないリソースが割かれる仕組みになっています。

これは、参考資料ですが、世界の学部卒業生たちがどれだけ新しい企業を立ち上げ、どれだけの資金調達に成功しているかのランキング資料です。テルアビブ大学は世界第8位、テクニオン大学は世界第12位であることがわかります。ここには掲載しきれていませんがTOP50にはヘブライ大学が32位、46位にはベングリオン大学を含む4校が名を連ねています。

これは、もちろん個人の力で成し遂げられることではなく、テックトランスファーと呼ばれる仕組みが大きく関係しています。

出典:PitchBook Universities 2020

幾つかの大学の取組を例として取り上げてみましょう。

1.Rafael Advanced Defense Systems & ベングリオン大学

8月31日掲載の『エコシステム:ハイテク輸出大国イスラエルを生み出したからくり プロローグで紹介したAdvanced Technologies Park内に研究開発センターを共同で開設

2.Yissum & ヘブライ大学

Yissumはヘブライ大学のTechnology Transfer Company(商品化などへの技術転用をサポートする会社)で、グローバル企業と手を組み、大学における研究開発を社会の課題解決に繋げる取り組みを半世紀以上に渡り行っています。ここからMobileye(日本でもその車両検知技術で知られており、2017年にインテルが約153億ドルで買収)が誕生しています。1964年の創業以来、10,000件以上の特許を取得し、170以上のスピンオフ企業を世に送り出しています。

3.T3(Technion Technology Transfer)& テクニオン - イスラエル工科大学

2のYissum同様、大学で行われている研究開発を商品化するための技術転用をサポートする組織であり、学生だけでなく、研究者や卒業生への支援も行っています。こちらもReWalk Robotics を含む120社以上のスピンオフ企業を世に送り出しています。

このような研究機関と産業界をつなぐテックトランスファーの役割を担う組織は、比較的良く知られているものだけでもイスラエルには15組織ほどあり、活動も非常に盛んであると共に、世界的な注目を浴びるような成功例も少なくありません。彼らはファンドを募り、資金調達も行います。

イスラエル国内に点在するこうした組織の長を務め、全体をまとめる役割を果たしているのがNPO法人でITTNとして知られるIsrael Tech Transfer Networkです。イスラエル政府との調整役を担い、同様の活動を行う海外の組織との交流や協業を推進する活動も行っています。

イスラエル政府は近年、ベングリオン大学よる応用技術研究、ヘブライ大学による暗号化研究など各国公立大学に研究領域を割り当てています。

こうした学業や研究を実際のビジネスに結びつけるための枠組みは、多方面からの新しいイニシアチブと革新的な技術を育み、幾つかは成功し、世界に羽ばたいて行きます。そして、それは学術界への貢献でもあるのです。なぜなら、成功した企業や起業家は、研究には欠かせない教育者の立場や資金調達に協力する立場にまわるからです。

次回はエコシステムの中の民間企業やベンチャーキャピタルなどの役割について紹介する予定です。

お楽しみに!

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