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ハイブリッド戦争とは?中国の超限戦による台湾有事のシナリオ

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ハイブリッド戦争とは?中国の超限戦による台湾有事のシナリオ

2014年のクリミア併合、ウクライナ東部の不安定化を受け、ロシアによる戦い方が変わり「ハイブリッド戦争」の脅威が高まったと言われています。

2022年2月以降、ウクライナにおけるロシアの軍事行動が活発化しており、あらためて日本の安全保障を考える上で注目されているのがハイブリッド戦争だというわけです。

本記事では、日本にとって身近な中国版ハイブリッド戦争の「超限戦」と台湾有事のシナリオについて見ていきましょう。

SOMPO CYBER SECURITY 企画グループ | 2022年6月22日

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ハイブリッド戦争とは

ハイブリッド戦争とは、唱導者のフランク・ホフマン氏によると「多種多様な手段を使って、政治目的を達成するために情報戦、心理戦を強く意識した」サイバー戦や情報戦、非正規戦などと正規戦を組み合わせた軍事戦略の手法です。

具体的には、軍事的な圧力に加えて経済的脅迫や融和的な外交政策を織り交ぜるほか、プロパガンダ、フェイクニュースやサイバー攻撃、テロや犯罪行為まで含むというものです。中でもサイバー攻撃は、AI技術の進歩とともに高度化しており、戦争と切り離せないものとなっています。

クリミア併合時に新しい戦争の形として注目されたものの、他国の世論を操作するといったハイブリッド戦争に似た手法は古代から実践されてきました。ただし戦場は、地理的に一般市民の生活の場とは別でした。

ハイブリッド戦争では、非国家勢力が従来であれば国家でしか使用できなかったような兵器を使用して戦ったり、あるいは国家が主体となって戦場とは見なされない場所でサイバー戦を仕掛けたりします。

あらゆる事象の境界が曖昧で、明確な兆候がないのに戦闘が始まっていることから、戦争に見えない戦争とも言えるでしょう。

ハイブリッド戦争の特徴として、その全容を把握したり成否を判断したりすることが非常に困難なことが挙げられます。そのため1つの国単体では、対処が困難で不十分になりがちです。

日本では令和2年度の防衛白書の中で、初めてハイブリッド戦争と「グレーゾーンの事態」について言及されました。グレーゾーンの事態とは、平時でも有事でもない幅広い状況のことで、気づかないうちに急速に重大な局面へと発展するリスクをはらむことを知っておくことが大切です。

中国の考える「超限戦」とは

孫子の兵法の本家本元である中国では、ハイブリッド戦争の概念は「超限戦」(ちょうげんせん)として知られています。超限戦とは、「すべての境界と限度を超えた戦争」のことです。

戦争と非戦争、軍事と非軍事、軍人と非軍人という明確な区別や境界がなくなるという意味で、戦争とは関係ないように見える手段をとって政治的目的を達成する戦略を指しています。

もともと超限戦は、現役中国人民解放軍空軍大佐である喬良氏と王湘穂氏の共著であり、1999年に発表された『超限戦 21世紀の「新しい戦争」』において使用された造語でした。本書は、「新しい戦争」の出現を予言したとして中国本土でベストセラーになり、台湾や香港でも広く読まれたのです。

アメリカ国防総省も、本書を翻訳したと言われています。その後、実際に民間航空機が超高層ビルに激突した「9.11テロ」の発生によって、その予言が的中したと話題になりました。

 「9.11テロ」では非職業軍人が非通常兵器を使用し、日常的な場所にいる一般市民を巻き込み戦術レベルのテロを発生させて、当事国に戦争に相当する打撃を与え震撼させたからです。日本でも「9.11テロ」を受けて、2001年12月に共同通信社から発行されました。

 本書によると新しい戦争では、貿易戦、金融戦、新テロ戦、生態戦、密輸戦、メディア戦、麻薬戦、ハッカー戦、技術戦、資源戦、経済援助戦、文化戦などが繰り広げられます。ルールに縛られない非国家勢力が新しい戦争を仕掛け、多大な損失を国家に与えることが想定されているわけです。

一定のルールに則って行動せざるをえない国家は、倫理や法の支配を超えて行動する見えない相手からの挑戦をうける際に非常に不利な立場に置かれていると言えるでしょう。

台湾有事における日本への影響は

ハイブリッド戦争は、日本から遠いヨーロッパだけで起きているわけではありません。超限戦について中国で出版されていることから、さまざまな形で中国が超限戦をすでにスタートさせている可能性が十分にあると考えられるでしょう。

例えば、漁船、武装民兵、海警局の監視船などの非軍事的な手段を駆使して、南シナ海における中国の存在感が急速に増していることはその1例です。南シナ海は、北東アジアとインド洋を結ぶ海上輸送の生命線であり、豊富な海洋資源に恵まれていることで知られています。 

最近では、その南シナ海に面し台湾での有事についても言及される機会が増えてきました。2022年6月には、シンガポールで開催されたアジア安全保障会議(シャングリラ会合)の場で中国国防相が「台湾が独立を宣言した際には戦争をためらわない」旨の発言を行っており、仮に有事が発生した際には⽇本の最⻄端に位置する沖縄与那国島からたった111キロという近距離に位置していることから、日本への影響は必至でしょう。

実際に、アメリカが台湾支援のために軍事介入に至れば、日米安全保障条約に則って日本は共同防衛を行う立場になります。常識的には中国の台湾侵攻は考えられない選択肢ですが、先程の発言の様に中国は台湾に対する武力行使を放棄しないとの意思を示し続けている点を忘れてはいけません。 

中台軍事力を比較すると、中国が継続的に高い水準で国防費を増加させる一方、台湾の国防費は約20年間でほぼ横ばいの水準となっています。国防費の格差は大きく、中国の規模は台湾の16倍です。

そのため万が一、台湾独⽴の動きが明らかになれば中国による武力行使は一気に現実味を帯びる可能性があるわけです。歴史的に日本は中国の主張する「⼀つの中国」原則を尊重しつつ、台湾問題の平和的解決が重要との⽴場を崩していません。 

今後、台湾の社会インフラに狙いを定めたサイバー攻撃などが起きる可能性はゼロではありません。しかし中国が⼀旦⾏動を起こせば、統⼀を完遂するまで終われないことから、中国はむしろ水面下で統⼀を画策する可能性が高いとも考えられます。

中国による超限戦に対して、台湾のみで対抗することは困難だと予想されることから、台湾との関わりや日本の防衛について改めて考える時期が来ていると言えるでしょう。

情報リテラシー能力の向上が日本の防衛の重要な鍵

ハイブリッド戦争や超限戦など現代の戦争のあり方への認識を深めることが、日本の防衛を考える上で非常に重要です。政府機関だけでなく社会インフラも攻撃対象とされるサイバー攻撃など、戦争に見えない戦争の挑戦は攻撃範囲と深刻度が増している点について、国民全体で認識を深めることが大事だと言えるでしょう。

特に日本はサイバー攻撃に対して脆弱だと言われていることから、優秀な人材の確保と教育拡充が急がれ、一般企業や市民レベルでも情報リテラシー向上を含めた国民全体の防衛意識の強化が重要だと考えられます。例えば「サイバー衛生(サイバー・ハイジーン)」という考え方です。これは社内のIT環境や個人のPCにおいて、インターネット接続環境を健全な状態に保つ取り組みのことです。

サイバー攻撃が簡単に成功しづらい環境づくりのためにも、国民全体でセキュリティ意識を醸成していくことが必要になります。

まとめ

ハイブリッド戦争においては、一見すると戦争に見えない戦争の手段を駆使して政治的な目的の遂行が行われます。特に社会インフラを狙った高度なサイバー攻撃の可能性については、防衛の観点から政府だけでなく国民全体で認識を高めることが大事です。

一般企業や市民レベルでは、情報リテラシー向上やサイバー衛生について意識を高めていくことが必要だと言えるでしょう。

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