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イスラエル箸休め企画 第六弾『やじろべえ国家の宗教と多様性』~ちなみに特集~

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イスラエル箸休め企画 第六弾『やじろべえ国家の宗教と多様性』~ちなみに特集~

Makiko Fukumuro@SOMPO CYBER SECURITY | 2023年3月2日

記事に関するご意見・お問い合わせはこちらへお寄せください。
(SOMPOホールディングス、損害保険ジャパンなどグループ各社へのお問い合わせはご遠慮下さい)

SOMPOホールディングスは、2017 年 11 月に日本の保険会社として初めてイスラエルのテルアビブにデジタル戦略拠点「SOMPO Digital Lab Tel Aviv」を開設し、サイバーセキュリティを含む複数の領域においてイスラエルのスタートアップ企業との協業の検討や実証実験を行なっています。 現在、SOMPO CYBER SECURITYでも複数のイスラエル企業と技術提携をして、日本のお客さまにサービスを提供しています。

そうした経緯から、イスラエルに関するコラムをお送りしています。

この『イスラエル箸休め企画』の案内役を務めますのは、9年ほどイスラエルに住んでいたことがあり、イスラエルのスタートアップ3社での勤務経験もある、SOMPO CYBER SECURITY 事業企画部所属の私、福室 満喜子です。

今回のタイトル『やじろべえ国家』、絶妙なバランスの上に成り立っている国であるとい意味で使っています。2023年2月現在、イスラエル国内は不穏な空気に包まれています。今まで保たれてきたバランスが崩れてしまうかもしれないという懸念からです。今までも幾度となくこうした危機を乗り越えて、バランスを保ってきた国ですので、今回もどうにか乗り越えてくれることを切に願います。

さて、そうしたこの国のバランスを宗教と多様性という観点から書いてみたいと思います。

まずは、年末に届いたイスラエルに住むイスラエル人の友達からのWhatsAppのメッセージ。

「春に日本に遊びに行きます。お母さんも一緒。昔みたいに一緒に旅行しませんか?」

「昔みたいに」、とても魅惑的な響きです。

彼女も私も旅行好きなので、イスラエルではキャンプ、ハイキング、バードウォッチングなど、あちこち一緒に出掛けたものです。私が日本に戻ってからも、クロアチアで待ち合わせて、近隣諸国を一緒に周っています。彼女の家族と一緒に旅行をしたのはギリシャのロードス島が最後で、彼女の妹と母親も一緒の女4人の珍道中でした。旅以外にもこの家族にはしょっちゅうお世話になっており、私のイスラエル生活において欠かせない存在でした。

イスラエルの祭日は、多くがユダヤ教関連の祭日で、必ず家族で集まります。家族のいない私はよく彼女たちの家に招かれ、一緒にお祝いの食卓を囲んだものでした。とまあ、似たように、密にお世話になっていた家族がもう2家族ほどあるのですが。。。イスラエルの皆さん、その節は本当にお世話になりました!

ミクミクの家族(写真提供:ミクミク 写真右下)

さて、この春に来日予定の家族の話から、少しずつ枝分かれさせて、「ちなみに特集」として、日本人なら「へ~」とか「え!?そうなの!?」と思うような、イスラエルで身近に感じられる宗教の存在や多様性について書いてみたいと思います。一見、相反するように思われがちな宗教と多様性、どんな感じで共存しているのでしょうか。

イスラエル人の親友 ミクミクの家族

私はこの友達のことを「ミクミク」と呼んでいます。

もちろんニックネームです。

ミクミクのお母さんの名前は「みつこ」、パラグアイ出身の日系二世、お父さんはイスラエル人なので、ミクミクとその妹イリスは、いわゆる日本で言うところの「ハーフ」です。

ちなみに①「ハーフ」という概念はイスラエルにはないに等しい

イスラエル箸休め企画 第一弾『もしかしたらこの国、好きかも?』の中でも「ダイバーシティを絵に描いたような国 イスラエル」という章で書きましたが、イスラエルには昔から多くの移民が存在し、容姿もさまざまです。よって、いろいろ混ざり合っていて当たり前。肌が白かろうが黒かろうが、目が黒かろうが青かろうが、金髪、黒髪、赤毛、直毛、クルクルパーマ、なんでもありの、まぜこぜです。

日本でも一時ニュースになっていましたが「地毛証明書!?何の意味があるの!?」という世界です。

アジアの血が混ざると、ちょっと目を引いていた時期もありましたが、そんな容姿の人も増えてきたので、やはり「ハーフ」という概念はないに等しいです。私はイギリス、スペイン、オーストラリアでの在住経験があり、アメリカ人の友達も複数いますが、この「ハーフ」という日本語の概念は、結構独特だと思っています。

ミクミクの家族の話に戻ります。

私がビザの関係で当時勤めていた日本企業を退職することが決まり、私の後任として雇われたのがミクミクのお母さんの「みつこ」でした。日本人の血を引く娘たちの良い友達になるのでは?と思ったみつこがミクミクをオフィスに連れてきて、私に紹介したのが始まりでした。

ちなみに②社員の家族を職場で見かけることも珍しくないのがイスラエル

日本ではあまり考えられませんが、子供や配偶者などを職場で見かけることも珍しくないのがイスラエルです。オフィスの構造が大部屋ではなく、個室もしくは2~3人の小部屋なのも、家族を連れてきやすい理由の一つかと思いますが、学校が休みの時期になると、小部屋から子供の声が聞こえることもよくあります。犬OKのオフィスで勤めていたこともあります。上司の奥さんから電話がかかってきて「旦那の誕生日だから、執務室をサプライズで飾りたいので手伝ってほしい」なんてこともありました。

ミクミクの家族の話に戻ります。

片言の日本語を話すみつこは、私の両親とほぼ同世代で、9人兄弟の末っ子として日本人の両親のもと、パラグアイに生まれました。パラグアイで後に旦那さんとなるイスラエル人と出会い、イスラエルにやってきたみつこの母国語はスペイン語ですが、ヘブライ語の読み書きも完璧です。動詞の活用や形容詞、数字の数え方も女性名詞、男性名詞によって変わるヘブライ語は「通じるヘブライ語」と「正しいヘブライ語」は結構違ったりします。「お育ちが出てしまう」と言っても過言ではありませんが、みつこのヘブライ語は非常に美しく、正しいものであることは、私にもわかります。

みつこはユダヤ教への改宗はしていません。

「改宗」って何?と思う日本人は多いのではないかと思います。

改宗してないと何か問題でも?と思う人もいるでしょう。

こと、宗教に関して、日本は神棚の下にクリスマスツリーを飾るような国民性ですから、結婚相手が神社の氏子であろうが、キリスト教徒であろうが、真言宗だろうが日蓮宗であろうが、さほど影響はない場合がほとんどだと思いますが、ユダヤ教はそうではありません。結婚相手がユダヤ教徒でない場合、改宗を強く望む家族もあります。

ちなみに③ユダヤ教は女系の信仰

非ユダヤ教徒との結婚で、より問題視されるのは女性がユダヤ教徒でない場合です。

ん?ん?どういうこと?と頭の中にクエスチョンマークがたくさん浮かんだ人も多いと思いますが、ユダヤ教は女系の信仰、つまり、母親がユダヤ教徒なら生まれてくる子供は自動的にユダヤ教徒となり、それは例え父親がユダヤ教徒でなかったとしても、です。逆に言えば、父親がユダヤ教徒であっても母親が非ユダヤ教徒の場合は、生まれてくる子供はユダヤ教徒ではないとみなされるため、女性がユダヤ教徒でない場合の結婚は、前出のような家族からの圧力や、夫婦間の話し合いがより重要になるわけです。

また、家族からの圧力はなかったとしても、ユダヤ教の国で子供をNon-Jewish(非ユダヤ教徒)として育てることがどういうことを意味するのか、親としてどうしたいのか、どういう子供に育って欲しいのか、夫婦で予めよく話し合っておく必要があります。

例えば、男の子が生まれたら割礼するのかしないのか?

ちなみに④ユダヤ教徒の男性は割礼必須

「男の子が生まれたら割礼するのか、しないのか?」

たまに耳にする話題です。

ユダヤ教徒として生まれた男の赤ちゃんには、Brit Milah(ブリットミラー)と呼ばれる割礼の儀式が待ち受けています。パーティー会場を借りて、親戚や友人を招いて盛大に行うこともよくあり、私も何度か呼ばれて現場を目撃しています。女の私でもなんとなく、もぞもぞ、ゾワゾワする光景です。

割礼は旧約聖書の中で神様との契約のしるしとして出てくるので、宗教的儀式と理解し、非ユダヤ教徒、または、こうした宗教上の習慣に異議を唱える人たちなどは、意思を持って子供に割礼をさせない場合もあれば、そこは深く考えず、みんなと一緒、などと割り切って割礼を施す場合もあり、生まれたばかりの子供のために親が決めなければならないので、結構、難しい問題の一つです。

ちなみに⑤非ユダヤ教徒はイスラエルでは「結婚」できない

イスラエルではユダヤ教徒でないと、イスラエルで言うところの「結婚」はできません。

宗教法上、認められていないのです。

では、ユダヤ教徒ではない人やお相手が非ユダヤ教徒の場合はどうしているのかというと、国外に出て、Civilian Marriage=市民婚(宗教法に基づかない一般の結婚)と呼ばれる手続きを行い、「結婚」して夫婦となり、イスラエルに戻ります。

ちなみに⑥イスラエルではイスラム教徒など、信仰する宗教によっては徴兵されない

イスラエルには徴兵制度があります。

歴史的にも長きに渡り、宗教に起因する問題を抱えてきたユダヤ教徒なので、よく考えたら当たり前のこと(?)なのですが、宗教によって国民の背負う義務が異なるというのは、私たち、日本人にとっては新鮮な話です。同じユダヤ教徒であってもウルトラオーソドックス(超正統派)と呼ばれるユダヤ教徒の人たちにも兵役は課されていません。祈りを捧げることで充分に国家に貢献しているから、という理由だと聞きました。同じユダヤ教徒であっても、その信仰の度合いによってカテゴリ分けされるというのも不思議です。

ちなみにのちなみに⑦母親がユダヤ教徒でない、非ユダヤ教徒の場合は兵役の対象

よって、イスラエル人であっても、ユダヤ教徒ではないミクミクとその妹も兵役の義務を果たしています。

ちなみにのちなみのちなみに⑧軍隊でのボランティア体験有り

何を隠そう、この私もボランティアでIDF(イスラエル国防軍)に潜り込んだことがあります。

一日署長ならぬ、一日兵隊体験。

医療関係の部隊に送り込まれ、その時の体験談をものすごくここに書きたいのですが、多分、書いたらいけないやつ。おそらく書いて許されるのは、食堂のご飯がびっくりするくらいマズかったことぐらいかと思います。

ミクミクの家族の話に戻ります。

ミクミクのお父さんは私たちが知り合って、数年後、急に亡くなりました。

ちなみに⑨イスラエルは土葬 お墓にも厳しいルール

ユダヤ教では火葬は禁じられています。

ミクミクのご両親は仲良し夫婦だったので隣同士のお墓に入りたい、でもみつこはユダヤ教徒ではない=通常の墓地への埋葬は許されていない、という問題がありました。非ユダヤ教徒の埋葬が可能なお墓を探し、そこにお父様のお墓を作り、その横にいつかはみつこも合流できるようにと区画を買う、ということをしていました。

自分は誰で、どうありたいか問題

パッと見はダイバーシティを絵に描いたような国なのですが、ユダヤ教徒ではないというステータスが、ちょいちょいひと手間を要する国ではあります。ひと手間を要するということは、自分がどうしたいのか、どうありたいのか、を問いかけてくる機会が多い、ということのような気がします。

私はイスラエルが好きで、家族同然の仲間たちがいて、もっと長く住んでいたかったのですが「偽装結婚でも何でもすればいいのでは?」という提案には乗れませんでした。在住資格を得るために、そういうことをしている人たちがいるのも知っていますが、私は考えた末に「NO」という結論に至ったということです。

お付き合いをしていた人の家族に改宗をにおわされた時は「勉強して、試験や儀式をこなせばいいだけ。その後、宗教的な戒律を守るか守らないかは別問題」と言う人もいましたが、私はやはりそれもしたくなかった。

アンバランスなバランス

イスラエルは不妊治療や子孫を残すということに対する考え方も非常にオープンです。
周りにもいろいろなパターンを見ています。

独身だけど、子供を望んで、いわゆる精子バンクを使った人。

精子バンクでなく、知り合い経由で子供を授かった人。

子供ができないので、ロシアから養子を迎え入れた人。

今、ニュースになっているLGBTや同性婚にもオープンなお国柄で、職場のイベントでも異性でないパートナーを連れてくるのも日常です。お母さん二人、お父さん二人の家族は特に珍しいわけでもなく、ウルトラオーソドックスの共同体にでも住んでいない限り、奇異の目にさらされることもありません。

「宗教」という足カセにもなり兼ねない重しがあるのに、それでも、こうした個人の意思や生まれを尊重するのもイスラエルの特長です。不思議な、理解しにくい非常に絶妙なバランスの上に成り立っているやじろべえ国家です。

イスラエルでは身近にある宗教ですが、全体として見たときに、それは必ずしも排他的とは限らない、絶妙なバランスの妙技であることは、ニュースからだけでは伝わりにくいと思いましたので、少し書いてみた次第です。

もちろん、普通に日本で生活していても人生は選択肢に溢れています。
でも、日本は選択肢があることに気付いていない人も多い気がしています。
一見オープンに見えるけど、意外と閉鎖的で、目に見えない足カセで悩む人が多い国、ニッポン。

イスラエルでの経験を経て「他人の目」ではなく、「選択肢」に敏感な人間になったし、それは私にとってはプラスだったと思っています。誰に言われたからではなく、自らが選んだ!という前向きな思いと、選択肢は他にもあるという心のsafety netの役割も担ってくれています。

そんなあれこれを気づかせてくれたイスラエルに感謝。

そして、家族のようにいつも私を迎え入れて、色々なことを教えてくれるミクミクの家族に感謝。

春の再会が待ち遠しいです!

Israel Now イスラエル紹介コーナー【Dolphin Reef in Eilat】

Dolphin Reefの浮桟橋
(写真提供:Assaf Marco)

エイラットはテルアビブから車で4時間、飛行機で1時間、イスラエルの最南端、地図で言うと尖った先っぽの紅海に面した街で、「イスラエルのリゾート地」といった位置づけでしょうか。箸休め企画の第1弾で触れた「エジプトから陸路でイスラエル」の時は、エジプト側からこのエイラットへ国境を超えました。

今回は当社でグローバルプロダクトオフィサーを務めるAssaf Marco(イスラエル在住)に久しぶりに登場してもらい、彼が先日休暇で訪れたというDolphin Reefを紹介してもらいましょう。

Assaf Marco@SOMPO CYBER SECURITY

海好きの私のお気に入りの場所の一つが紅海に面した街、エイラットにあるDolphin Reefと呼ばれるビーチリゾートです。少なくとも年に1度は必ず、家族や友人と訪れています。エイラットという街は夏にはバカンスを満喫する国内外からの多くの観光客で賑わいます。そのため、見どころも多く、美味しいレストランも点在しています。ですが、私のお気に入りは何と言ってもこのDolphin Reefで、イルカとたわむれることができるスポットです。

1990年にオープンし、バンドウイルカが自然環境に近い状態で暮らしています。

アサフ(右)と親友 鶏と共に(写真提供:Assaf Marco)

「イルカショー」に登場するイルカのようにトレーニングを受けたイルカではありませんが、観光客と自由に触れ合うことができる環境です。「観光客がイルカと自由に」ではありません、「イルカが人と自由に」です。人に近寄るかどうかは彼らが決めます。イルカは好奇心旺盛で、有効的な生き物ですので、施設内の観察エリアや浮桟橋にも近寄ってくるものもいます。シュノーケリングをする観光客やダイビングを楽しむ観光客の横で泳いだりもします。周囲には囲いが設けられており、その広さは1万㎡(東京ドームのグランド部分程度)ほどで、深さは12mほどです。多くの魚も生息していますので、ダイビングやシュノーケリングも堪能できますし、イルカのことを学ぶワークショップなども充実しています。施設内には大きなバーもありますので、家族連れでも友達同士でも楽しむことができる場所です。イスラエルに来た際は、少し足を延ばして是非訪れてみてください!

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